輸入車
更新日:2020.05.22 / 掲載日:2020.05.22

【試乗レポート キャデラック XT5】アメリカならではのゴージャスな世界観を持つSUV

キャデラック XT5プレミアム

文●工藤貴宏 写真●内藤敬仁、澤田和久
 
  1990年代後半に北米で大ブレイクし、2000年代に入って欧州へも飛び火。さらには日本をはじめとするアジア圏へ広がって、セダンを凌ぐほどの人気となっているジャンルがSUVだ。
  日本人にとってもっとも身近なSUVが日本車であることは言うまでもないが、その次にメジャーな存在と言えるのは欧州車だろう。「メルセデス・ベンツ」「BMW」そして「アウディ」といったドイツ御三家ブランドはいまや「SUVフルラインメーカー」といえるほどコンパクトモデルから超大型までラインナップを充実。さらにはハイエンドブランドの「ロールスロイス」やスーパーカーメーカーの「ランボルギーニ」までがSUVをデビューさせ、そのブランドの販売台数を大きく押し上げるほどの人気となっている。
  いっぽうで、SUV発祥の地であるアメリカのSUVも根強い人気がある。日本においては国産車や欧州車ほどメジャーな存在ではないが、とはいえ“アメ車”ならではの独特の雰囲気はいまなお健在。「キャデラック」の「XT5」もそんなアメリカンな世界を存分に味わえるSUVだ。

 キャデラックは、GMのなかでも最上級のポジションとなるブランド。大統領専用車としても使われているブランドで、アメリカのプレミアムモデルを語る上では欠かせない存在といっていい。かつては大型セダンやクーペを中心に展開していたが、昨今は時代の変化を受けてコンパクトモデルやSUVも展開。それどころか、SUVがメインといえるほどのラインナップとなっている。
  XT5は、そんなキャデラックのSUVシリーズの中では「XT4」(日本未発売)に次いで下から2番目のポジション。ちなみにその上は日本でも販売している「XT6」、そして最上位となる「エスカレード」だ。
  しかし、下から2番目とはいえボディサイズは全長4825mm×全幅1915mmと日本の感覚でいえばかなりの大きさ。トヨタ「ランドクルーザープラド」が全長4825mm×全幅1885mmなのでほぼ同じと考えればイメージしやすい。
  しかしながら、ランドクルーザー系など日本の大型SUV、そして欧州の大型SUVと異なるのはメカニズムだ。それらは基本的にエンジン縦置きのレイアウトだが、XT5は大きめの車体サイズながらエンジンを横置きに搭載するFF乗用車系のプラットフォームを使った4WD。アメリカはいま比較的大きなSUVでもFF乗用車系のプラットフォームで仕立てる車種が急激に増えていて、XT5もそのひとつ。すなわち、ハードに悪路を走ることは想定されておらず、それよりも舗装路での走行性能や快適性を重視した都会的なモデルなのだ。

アメリカならではの「高級」表現。きらびやかで堂々とした雰囲気が魅力

ベーシックな「プレミアム」であっても歩行者対応自動ブレーキやレーンキープアシストは標準装備

 そんなXT5の何よりの見どころであり魅力は、日本車や欧州車とは異なる世界観。アメリカンラグジュアリーの神髄にどっぷりと浸れることである。日本や欧州の上級SUVは“上質”だが、アメリカンの高級ブランドはちょっと違う。上質というよりも“豪華”なのだ。
  たとえばエクステリアはギラギラとしたメッキパーツが大胆にあしらわれ、立派に感じられる。そのおかげで存在感はボディサイズ以上だ。
  室内に入れば、メッキパーツに加えて木目パネルがコーディネートされて独自のきらびやかさにあふれている。さらに、ふんだんに使われた肌触りのいいレザーもいいもの感を味わえる。そのうえシートのデザインなども立派に見えるように作られていて、かつてよりも控えめになったとはいえやっぱりアメリカならではの色合いが濃いのだ。そんなギラギラな世界観に惹かれる人も少なくないだろう。 大きな車体サイズのおかげもあって、室内はとにかく広い。真骨頂と言えるのは後席で、足元スペースの広さは目を見張るものがある。それは大きな車体に加え、エンジンルーム長を詰められるFF乗用車系プラットフォームの恩恵でもある。リヤシートは前後スライドやリクライニング機能も備え、快適性を高めている。

  • 2ウェイパワーランバーサポート付きの8ウェイ電動調整式シート

  • 電動サンルーフやBose社の14スピーカーシステムを標準装備

  • 標準状態で850Lの容量を誇るラゲッジルーム

  • セカンドシートを倒すとフラットになり、1784Lもの巨大な空間が生まれる

先進安全装備も充実。上級グレードには全車速対応のアダプティブクルーズコントロールも搭載

タッチスクリーン式のインフォテインメントシステム。ナビはスマートフォン連携型

 また、上級ブランドの新しめのSUVだけに、先進装備や快適装備も充実している。衝突被害軽減ブレーキに関しては、フロントはもちろん、バック時に障害物があるとブレーキを作動させて停止し接触を防ぐ機能も搭載。360度カメラと合わせて、大きめの車体ながら駐車場などでも安心して運転できる。上級グレードの「プラチナムスポーツ」では全車速対応のアダプティブクルーズコントロールが備わるし、ナビはApple CarPlayやAndroid Autoでの接続によるスマホアプリ依存となるものの、8インチのタッチディスプレイは標準装備だ。さらに、エンジンを遠隔始動できるリモコンキーなど珍しい装備も搭載している。

アメリカ車のイメージをくつがえす。洗練されたドライブフィール

一定速度でのクルージング時に2気筒を休止する低燃費技術を搭載

 ところで、アメ車と言えば走りがイマイチというイメージを持っている人もいると思う。しかし、XT5に乗るとその洗練されたドライブフィールに驚かずにはいられないだろう。
  まず、314psを発生する排気量3.6LのV6自然吸気エンジンはシュン!と高回転まで気持ちよく吹け上がってとっても爽快。そのうえ想像のはるかに上をいっていたのがハンドリングで、ドライバーのハンドル操作に対して忠実。素早く正確に向きを変えるからスポーティなのだ。左ハンドルだから運転間隔の慣れは必要だが、走りを楽しめるクルマだ。
  もちろん、乗り心地もかつてのアメ車と違ってユルユルのフワフワではなく適度に締っていて、走りの部分は欧州車に近づいていることを実感する。キャデラックはアメ車ながら車両開発の聖地ともいわれるドイツの過酷なサーキット「ニュルブルクリンク」を走り込んでいるブランド。優れた走行面にはその成果が出ているのだろう。

同じようなサイズの欧州車に比べて価格は圧倒的にリーズナブル

路面状況を感知し、10ミリセカンド毎に駆動力を適切に配分する4WDシステムを採用

 そんなXT5だが、実は最大の魅力は価格かもしれない。
  ベーシックグレードの「プレミアム」は650万円。前席ベンチレーション、後席シートヒーター、トライゾーンエアコン、電子制御サスペンション、そして20インチタイヤなどが備わる上級の「プラチナムスポーツ」は785万円というプライスタグ。これはボディサイズからみてライバルと言えるメルセデス・ベンツ「GLE」(954万円~)やBMW「X5」(938万円~)に比べるとグッとリーズナブルなのだ。
 独自の豪華さがあって、室内が広くて快適で、さらに走りも磨かれている。先進安全装備だって充実。そのうえライバルに対して割安感がある。それは、プレミアムSUV選びの候補に入れて間違いのないモデルであることを意味するだろう。
 
 
 キャデラック XT5プレミアム(9速AT)


全長×全幅×全高 4825×1915×1700mm
ホイールベース 2860mm
トレッド前/後 1636/1636mm
車両重量 1990kg
エンジン V型6気筒DOHC
総排気量 3649cc
最高出力 314ps/6700rpm
最大トルク 37.5kgm/5000rpm
サスペンション前/後 ストラット/マルチリンク
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前後 235/65R18

販売価格 650万円~785万円(全グレード)



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グーネットマガジン編集部

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